ぐちゃぐちゃB

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ぶわりと、例えようもない激情が沸き上がって。 不可抗力に嗚咽が零れて。 そのまま、声をあげて泣いてしまう。 そんな私を、愛しくて堪らないふうに撫でながら…… 「一生大切にする。 俺と、本当の夫婦になってくれる?」 再びプロポーズの言葉が告げられる。 言葉にならなくて、必死に必死に頷くと。 「ありがとうっ……」 噛み締めるように零されて。 腕をほどいて、私の手を取った楓くんから…… 薬指に、眩い奇跡が授けられる。 まだどこか夢のようで…… だけど、これほど幸せな事はなくて…… 魂が震える思いだった。 「私こそっ、ありがとうっ……」 いっそう涙で溢れ返ると。 親指で優しく拭われて、唇で愛しげに拭われた。 「一緒に帰ろう?すぐにでも」 思わずコクンと頷いたものの。 「ああでもっ、荷物があるから…… 楓くんだけ、先に帰ってて? 私もなるべく早く、帰るから」 といっても引越業者を手配しなきゃだから、最短でも明後日以降になるだろうけど。 「荷物なら大丈夫だよ。 必要最小限のものだけまとめたら、あとは重松さんが段取ってくれるそうだから」 「ええっ!でもっ…… 重松だけに、押し付けるわけには……」 「いや、それくらいはさせて貰わないと顔向け出来ないらしい。 どんな理由があっても、裏切った事に変わりはないからって」
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