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しかもそのために、近くで待機しているらしく。
そういう事なら譲ってくれないだろうと、困惑する。
「ていうか、杏音は俺と離れてても平気なんだ?」
「いや平気じゃないけどっ」
「俺はもう耐えられない。
杏音が帰らないなら、俺もここから通勤するから」
えええっ、そんなぁ〜。
さすがにそんな無理をさせるわけにはいかなくて……
素直に甘える事にした。
それにより。
楓くんからの報告を受けて、重松がやって来た。
「ごめんね、重松。お願いね?」
「いえ私の方こそ、本当に申し訳ございませんでした」
その目は少し赤くって……
きっと私たちの事を自分の事のように喜んで、涙してくれたんだろう。
「何言ってるの。
重松のおかげでこうなれたんだし、今までも……
本当に、言葉に出来ないくらい感謝してるわ。
ありがとう」
そう、重松はいつだって……
たとえ自分の立場が危うくなろうとも、私の絶対的な味方でいてくれた。
「いえ滅相もないです。
結果はどうであれ。
お嬢様のお気持ちを踏みにじり、楓様を苦しめてしまったのですから……
これ以上、お嬢様にお仕えするわけにはいきません。
なのでこの引越しを最後に、お側から退かせていただきたいと存じます」
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