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そして引越しが終わり次第、社長秘書をしてくれる事になったのだった。
そうして。
2度と戻って来る事はないと思っていた場所に、楓くんと一緒に帰宅すると……
なんと今度は、退職祝いを贈られる。
「うそ、いいのっ?
こんな高価な指輪までもらったのに……」
それは額縁の中央に浮かんでるみたいに、透明ラッピングされた……
一点もののような、温かみのあるペアのマグカップだった。
「いいもなにも、杏音のために作ったんだし」
「えっ……
これ楓くんの、手作りなの?」
「うん、何を贈ろうか悩んでさ。
花はみんなに貰うだろうし、お金をかけると怒られそうだし。
レザークラフトしてたから、手作りなら喜んでくれるんじゃないかって。
けど退職日に間に合わなかったから、指輪が出来たら一緒渡そうと思ってたんだ。
遅くなってごめん」
言葉を失くして、ぶんぶんと首を横に振る。
むしろ、退職祝いなんか気にしなくてよかったのに!
20年も叶わぬ想いを募らせてた相手が、まだ悪役だった私のために……
喜ばせようと頭を悩ませて、わざわざ作ってくれたなんて。
そんなの嬉しすぎて、涙腺が崩壊するに決まってた。
きっと悪役の時でも、ボロ泣きしてしまっただろう。
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