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琉司は当時大学留年中だったため、勝負は入社してからだった。
だけど血の繋がった父が亡き状況となれば、長引けば長引くほど不利になる。
そこで私は、楓くんとの結婚を企てた。
そう、夫を社長に斡旋すれば、男社長が有利という問題を払拭出来る。
それどころか。
老舗企業を始め多くの上場企業で、婿養子経営が功を成してるため。
婿(名字を変えるだけ)社長でも歓迎されるに決まってた。
なによりこの結婚は、私の計画に好都合だった。
楓くんは嫌だろうけど……
勝率を上げるには、復讐を成功させるには、一番の近道だと思った。
そうして……
*
*
*
楓くんを、私が部長を務める人事・総務部のセキュリティルームに呼び出すと。
結婚を言い渡された彼は、その強くて妖艶な瞳を大きく開いた。
不安と緊張で、胸を壊れそうなくらいドキドキさせながら……
淡々と理由を説明するも。
警戒した様子で、もっともな疑問がぶつけられる。
「……だからって、なんで俺と?
今までほとんど話した事もないし。
そういう理由なら、俺みたいな一介のエンジニアじゃなくて、もっと権力がある幹部の方がいいと思うけど」
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