ドキドキ

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「どこが一介のエンジニア? 誰よりも多くの製品開発やコストダウンを実現してるし。 この前開発したものは、この業界を覆す主力商品になるわ」 入社から5年、27の若さでここまでの偉業を成し遂げるなんて…… 「あなたはとても有能な、天才エンジニアよ」 そう、亡くなったお父様と同様に。 そう思うと涙が込み上げて、慌ててそれを引っ込める。 そんな私を知るよしもなく。 「あぁ、なるほど。 その特許権が欲しいからか」 と苦笑う楓くん。 というのも…… 通常仕事上の発明は職務発明となり、規程を定めていれば特許権は会社が有する。 その場合、発明者には相当の利益を受ける権利が発生する。 逆に規定を定めていなければ特許権は発明者が有するけど、会社に譲渡すれば同様に利益権が発生する。 そのためうちの会社では規定を定めず、こちらに都合がいい利益内容で譲渡するよう協議し(言いくるめ)ていた。 だけど楓くんはどれだけ高額で交渉しても、特許権を譲らなかったのだ。 でも結婚すれば状況的に橋元のものになるわけだから、その相手に自分が選ばれたと思ったんだろう。
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