430人が本棚に入れています
本棚に追加
「どこが一介のエンジニア?
誰よりも多くの製品開発やコストダウンを実現してるし。
この前開発したものは、この業界を覆す主力商品になるわ」
入社から5年、27の若さでここまでの偉業を成し遂げるなんて……
「あなたはとても有能な、天才エンジニアよ」
そう、亡くなったお父様と同様に。
そう思うとまた涙が込み上げて、慌ててそれを引っ込める。
そんな私を知るよしもなく。
「あぁ、なるほど。
その特許権が欲しいからか」
と苦笑う楓くん。
というのも……
通常仕事上の発明は職務発明となり、規程を定めていれば特許権は会社が有する。
その場合、発明者には相当の利益を受ける権利が発生する。
逆に規定を定めていなければ特許権は発明者が有するけど、会社に譲渡すれば同様に利益権が発生する。
そのためうちの会社では規定を定めず、こちらに都合がいい利益内容で譲渡するよう協議していた。
だけど楓くんはどれだけ高額で交渉しても、特許権を譲らなかったのだ。
でも結婚すれば状況的に橋元のものになるわけだから、その相手に自分が選ばれたと思ったんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!