431人が本棚に入れています
本棚に追加
「いいえ、むしろ……
結婚に応じてくれなければ、特許権をいただくわ」
そう不敵な笑みを浮かべて、私はとある書類を提示した。
それは今話題に出た業界を覆す商品の、特許権を譲渡するといった書類で。
楓くんは信じられない様子で眉をしかめた。
「実施権(会社が発明したものを使用出来る権利)の書類と差し替えてたの。
今まで何度もしてきた手続きだから油断したわね」
私はそこに目を付けて……
楓くんがサインする下部を鉛筆で囲んだ、手続き書類一式をクリップでまとめ、簡略化を装って署名に至らせたのだった。
とはいえ、楓くんがそんな油断をするとは思えない。
つまり私が今言った事は嘘で、提示してる書類も偽造なのだ。
でもそれを立証するのは難しい。
しかもこういった状況下だと、人は自分の行動に100%の自信が持てなくなるものだ。
楓くんは「おや」と言いかけて、怒りを通り越したように冷笑した。
私は何を言おうとしたのか見当が付いて、胸が痛んだ。
だけど計画通りと切り替えて、再び不敵な笑みを作ってみせた。
「でも、悪い話じゃないでしょう?
私と結婚すれば、この譲渡書類は破棄するし。
この復讐が成功すれば、あなたは社長になれるのよ?」
最初のコメントを投稿しよう!