ドキドキ

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「いいえ、むしろ…… 結婚に応じてくれなければ、特許権をいただくわ」 そう不敵な笑みを浮かべて、私はとある書類を提示した。 それは今話題に出た業界を覆す商品の、特許権を譲渡するといった書類で。 楓くんは信じられない様子で眉をしかめた。 「実施権(会社が発明したものを使用出来る権利)の書類と差し替えてたの。 だから油断したわね」 私はそこに目を付けて…… 楓くんがサインする下部を鉛筆で囲んだ、手続き書類一式をクリップでまとめ、簡略化を装って署名に至らせたのだった。 とはいえ、楓くんがそんな油断をするとは思えない。 つまり私が今言った事は嘘で、提示してる書類も偽造なのだ。 でもそれを立証するのは難しい。 しかもこういった状況下だと、人は自分の行動に100%の自信が持てなくなるものだ。 楓くんは「おや」と言いかけて、怒りを通り越したように冷笑した。 私は何を言おうとしたのか見当が付いて、胸が痛んだ。 だけど計画通りと切り替えて、再び不敵な笑みを作ってみせた。 「でも、悪い話じゃないでしょう? 私と結婚すれば、この譲渡書類は破棄するし。 この復讐が成功すれば、あなたは社長になれるのよ?」
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