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ますます居た堪れなくなってると……
「薬指のサイズは?」
「……え、9号だけど」
思わぬ問いに戸惑う。
「了解。
じゃあ結婚指輪、用意しとく」
「ええっ、ほんとにっ!?」
断らないと思ってても、こうもあっさりOKされるとは思わなくて、思わず素が出る。
そんな私を、またクックと笑う楓くん。
しまった!と、慌てて咳払いをして切り替える。
「まぁそれが賢い選択ねっ。
でも指輪は結構よ。
あなたの金銭感覚で選ぶような指輪じゃ、恥ずかしくて付けられないもの。
こっちで用意するから、あなたのサイズを教えなさい」
だって、楓くんにそんな負担させられない。
「……じゃあ遠慮なく」
*
*
*
そう、この結婚に愛はない。
それどころか私は嫌われている。
汚いやり方で脅迫して、利用して戸籍を汚した、1コ下なのに小生意気な社長令嬢だから……
だから私の事で出費させられないし。
一緒にいるのも嫌だろうから、新居も二世帯マンションにした。
となると、ハネムーンなんかもってのほかに決まってて。
今週の株主総会を理由に、表向きは延期にしていた。
そして当然、キスだってしたくなかったに違いないから……
可能な限り防いだものの、そこはごめん。
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