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鉄治は水無月とカンコの間を通り抜け、海子の手を握った。
「鉄ちゃん……?」
「帰ろ? お腹空いちゃった。そうだ、帰りにフードコートでラーメン食べてこ?」
「え……? どうして」
「行こうよ」
弁護士が「やはりか」と悟った顔をしながら鉄治に問いかけた。
「鉄治くん、海子さんが君のお母さんなんだね?」
鉄治は軽く涙を拭い、水無月とよく似た凛とした顔し、声変わり前の高らかな声で返事を返した。
「はい!」と。
水無月とカンコは「信じられない……」と、言った呆然顔を晒しながらその場で立ち尽くした。鉄治は二人の「お母さん」に深く礼をする。そして一言ずつお礼の言葉を送る。
「水無月のお母さん、体をくれてありがとう」
「……」
水無月は何も返さない。どうしてあたしを選ばないと仏頂面を浮かべている。
「カンコのお母さん、お腹の中で育ててくれてありがとう」
「……」
カンコは鉄治とのへその緒を切られた時点で縁も切れていたことに初めて気が付き、泣き濡れる。
鉄治と海子の二人は手を繋ぎ、鉄治は生まれ育った家へと帰る。
弁護士は「遺伝子の母よりも、産みの母よりも、育ての母とはよく言ったものだ。君が過ごした十二年に嘘はなかったんだね」と、感動の涙を浮かべながら二人を見送るのであった。
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