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だけど、そのメッセージは一日経っても、二日経っても既読は付かなかった。
その間に送ったメッセージは数え切れない。そのどれも読まれることは無かった。
オレはかなり焦っている。
こんなことは初めてだ。
そして気づく。
オレはあの子とメッセージでしか繋がってなかったということに。
厳密に言えば、通っている高校は分かる。だけど、あの子の住所も電話番号もメールアドレスすら知らなかった。
高校で待ち伏せする訳にはいかない。仮にも1年半前に実習に行った先だ。オレの顔は割れてるし、そんなことしたら、まだまだあそこに通うあの子に迷惑をかけてしまう。
最寄りの駅で待ち伏せ。
それもダメだ。
あの学校は交通手段が四通りもある。あの子の住所が分からないんじゃ、どのルートで通ってるのか分からない。
八方塞がりだった。
オレは祈るようにメッセージアプリに返事が来るのを待ったけど、そこは相変わらず既読すら付かなかった。
そんなオレの心情は仕事にも響き、つまらないミスを連発していた。
営業のオレは基本外回り中心で会社にはいないのだけど、あまりのダメっぷりに上司からしばらく外に出るなと言われてしまった。
あまりいることの無い会社は、デスクはあるものの居心地が悪い。そんな中でやっときた昼休みも食欲がわかずデスクに突っ伏していた。
そして否が応でも気付かされる。
オレはあの子が好きなんだ、と・・・。
今までこんな気持ちになったことはなかった。
来るもの拒まず、去るもの追わず。
今まではそれでなんの支障もなかったのに、今回は(まだ決まった訳ではないけど)去ったあの子を追いまくり、仕事にまで支障をきたす始末。もう認めざるを得ない。
それにしても、オレはいつからあの子が好きなんだろう?
オレの中では劇的に気持ちの変化があった訳ではなかった。
大学に来た時?
準備室でいたされちゃった時?
それとも、遠くから見ていた時?
そのどれもしっくり来なかった。
その時、不意にあの子の言葉を思い出した。
『ねぇ、覚えてる?』
『僕たちが初めて会った時のこと』
そもそも今回の原因はこれだった。
オレたちが初めて会った時・・・。
もしかして、もっとずっと前に会っていた?
そう思った時、後ろのテーブルでランチをとっていた女子社員たちが黄色い声を上げた。
「超かわいい!何この子!」
「すっごいかわいいでしょ?いまいち推しの子なの。ジェンダーレスの子の中でもずば抜けてかわいいのよ!見て、この雑誌、子供の頃の写真が載ってるんだけど、めっちゃかわいいの!」
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