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ねぇ、覚えてる
なにか、僕らをみているようだよ
あんな時もあったよね
ほら、初めてのデートさ...
・・・
妻の三回忌を終え、ひとり海岸に車を止めてぼんやり海を眺めていた。
今にも降って来そうな曇り空で、波の色も濁っている。
こんな日は人出も少ない...
シートを少し倒し、缶コーヒーを飲みながらFMラジオを聴いていると、防波堤の遊歩道を歩く若いカップルが見えた。
付き合い始めて日が浅いのか、並んで歩いてはいるが、その距離は少し遠慮がちだ。
風に乱れるセミロングの髪を片手で押さえながら、彼の話に大きく笑顔でうなずく横顔が初々しい。
晴れていれば、夕日が綺麗なのだが...
そんなことを考えているうちに、車の前を通り過ぎた。
黒地に 白い水玉模様のワンピース。
レースをあしらった、ノースリーブの肩から伸びるしなやかな腕。
『手を繋いであげなよ』
ラジオから流れる真夏の讃歌が、何処か寂しげにエールを贈った。
・・・
あぁ、子ども達も巣立っていった
これからは
ゆっくり過ごせそうだよ
君の思い出と共にね
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