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「――――ふん、焦点は合っているみたいだな。ならばよしだ。
まったくどんな無茶をしたのかは知らんが、これからはもっと命を大事にしろよ。死にたがりを何度も救ってやる暇は私にはないんだ」
「……ちょ、ちょっと待ってくれ」
荒療治が成功したことに満足したのか、今度こそ立ち去ろうとする女を俺は咄嗟に呼び止める。
視界の変調が元に戻ったのは有り難いが、その対処法が問題だった。具体的にどんなことをされたのかなど知る由も無いが、ただ思いきり殴られただけで治まるような症状でなかったことだけは間違いない。
それにこいつの言動、まるで俺の体に起きた異変について何か知っているような口ぶりではないか。その怪しげな風貌といい、どことなく世間知らずな振舞いといい、どう考えてもまともな人間ではないと思っていたが。
「あんた……いったい何者なんだ」
「レディの秘密を問うにしては少々無作法だな」
「…………だからそういう……」
「ちなみに一応言っておくが、私に惚れても無駄だぞ。生憎だが未成年とは関係を持たない主義でね」
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