フレイミングナイト

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「ユタカはそろそろお酒をやめたほうがいいね」  そう言って、しばらく沈黙した。心の底から同意を示したあと、チャンが原口のことをファーストネームである「ユタカ」と呼んだことに気づいた。私たちのつながりが冷たく乾燥した巨大な気団に触れて、硬く萎縮しているのを感じた。 「どうしようか」  チャンの沈黙が長いので、私は足元を確認するように問いかけた。芯から凍りついたつながりが、いつ音を立てて割れてしまわないか心配になったからだ。チャンが私たちを放棄したら、私と原口が立つ不安定な架け橋はきっと派手に崩れて、二人は底の見えない暗い川に投げ込まれるだろう。  やがて訪れたチャンの答えは、私への回答ではなかった。 「見つけたんだ、やっと」 「……なにを?」 「ぼくがずっと探してたものだよ。シンゴは見てない? 炎上してるコメント欄にね、さっきおもしろいことを書き込んだ人がいたんだよ」  おもしろいこと? 私はチャンの言葉を反復することしかできなかった。私の知らないところで世界が動きすぎている。 「The thing from the sea。あの動画のオリジンを作ったっていう人が出てきたの」 「オリジン……元の動画制作者ってこと?」 「そうそう、それでね。その人は、コピー動画を不当にアップロードしていることを訴えるとか言ってる」 「最悪じゃんか」  いつの間にか私は立ち上がって通話していて、崩れ落ちるようにベッドに膝をついた。早く対処しなければ。チャンと話しているこの間にも、ネガティブなコメントはどんどん膨らんでいく。悪意は悪意を呼び、やがて黒い靄は凝集して殺意を持った動物と化し、私を殺しにくる。
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