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「先日、私たちのチャンネルのうち、もっとも古い動画がテレビで紹介されました。それを機に、その動画が無断でコピーしたものを転載しているのではないか、という疑問のコメントを数多くいただくようになりました。そこで、まず謝罪しなければならないことがあります。このチャンネルの制作スタッフが、寄せられたコメントに対して汚い言葉を使って反論したことについてです。反論を書き込んだのは、いま出ている私とチャン君ではなく、動画を編集しているスタッフですが、彼の言葉遣いには非常に多くの批判が寄せられました。まず、汚い言葉で多くの人を傷つけてしまったことにつきましては、チャンネルの制作者一同、心よりお詫び申しあげます。本当に申し訳ございませんでした」
チャンとともに過剰なくらい長く頭を垂れて、やっと目線を前に戻すと原口が震えていた。振動を自覚しているようで、三脚のハンドルからは手を離している。平静を装うために液晶をのぞき込んでいるが、わたしとチャンの目線を避けようとしているようにも見えた。
私は、自由におびえることのできる原口がうらやましかった。彼の数メートル先にいる私は、体を震わせようにも震わせられない別世界にいた。原口の震えは生への執着の証だ。私はおびえることももがくこともできずに、動画のデータにしまい込まれて、ネットの海の中に投棄される運命にある。
「そして、この動画が無断転載かどうか、ということについては――」、そこで言葉を切って、私はチャンの方を見た。
「みなさん、その点については、ぼくの方からお話があります。ええと……」
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