娘の話

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外界へのアクセスができない環境で、僕はただ誰にも助けを求めることもできないまま、死ぬのだと気づいた。 誰にも助けを求めることができない。守るべきものもない。一切の光の入らない閉ざされた部屋の中、僕は部屋の温度が急上昇し、煙が充満していくのを感じる。 そして火の手がリビングにまわり、炎が天井を這うようにして近づいてきた。 僕の体にかけられた可燃液体に引火した。体中を炎に肉体を焼かれる強烈な痛みと悪臭の中、僕は転げまわりながら、それこそ必死で体から炎を引きはがす努力をしたが、 やはり無駄であった。僕は死ぬ。 ———1——— 「誰かに電波で心を読まれた気がするの。昨日も学校からの帰り道、宇宙人みたいな銀色の顔をした男がわたしをつけていたの」 会社から帰宅して、玄関に入ってすぐ僕は娘と鉢合わせしてしまった。 そういって私の娘「こまこ」は奇妙な笑みを浮かべながら、何もない天井を見上げた。 いつの頃からか娘は精神状態が極度に不安定な状態になっていた。
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