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だが僕の要望で娘を心療内科や精神科につれていったりはしていない。僕のキャリアに傷が付く恐れがあるからだ。その判断をして以来、妻は私の存在を無視するようになった。
「またそういっておまえはわけのわからない自己主張をして僕たちをイライラさせる気だな。誰もお前のことなどみてはいない。自意識過剰もいいかげんにしろ」
僕はそういって娘の顔を叩いた。娘は天井を見上げながら、妄想をつぶやきつづけていた。
その姿を妻は包丁で魚を切りながら、見ている。
息子は地蔵になったようにただ静かな瞳で見つめている。
誰一人言葉を発することはない。ただ娘がそれこそ何処かから電波を拾うスイッチの壊れたラジオのように悲鳴のような声を出しながら、繰り返し繰り返し妄想を口から垂れ流していた。
「うるさい。だまらせろ」
息子がこまこの手を掴み、二階の部屋に連れて行った。
その日、二人は一階のリビングに戻ってこなかった。
時が止まったような静けさの中、妻は包丁を研いでいた。
ーーー2ーーー
朝、イライラするので、部下をいびり倒してやった。
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