君への思い

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フードの男はその場を動くこともなく、俺に語り始めた。 『人はね、色々な経験をし、感情を会得することで、多少のことでは動じなくなっていくものなんだ。 それは生きるために必要なパラメーターだ。 何か問題があった時、瞬時にそのパラメーターから過去に似たような、経験した問題を引き出すことで、どうしたらいいか考え、答えを弾き出すことが出きる。 経験に無駄なものなどひとつもないんだよ。経験はパラメーターを作るための必要なデーターなんだ。 そのデーターを集めることで自分が作られていく。 だから、どんな感情を持っていても恐れることはない。パラメーターを作る過程なのだから』 「……」 『パラメーターを作る。それはね、人の本能、生きたいという本能からのメッセージなんだ。 人は、壊したいと感じることが出来るから、守りたい、作りたいと思うことが出来るんだ。 人は、孤独を感じることが出来るから、幸せだと、愛おしいと感じることが出来るんだ。 だから、感情を殺してはダメだよ。 思ったことを、感じたことを、何でもいいから言葉にして吐き出すんだ。 人に話すのもいい、泣いてもいいし、わめいてもいい、文字に書き出してもいい。 なんでもいいんだ。わからないならわからないと書けばいい。』 ツーっと流れ落ちていく涙。 あぁ、そうだ。 そうだった。 男はそっとフードを脱いだ。そして、男は……いや、もう一人の俺は、泣きながら笑っていた。 『だから、恐れないで。今、俺が感じている、本当の思いを……。』
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