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思い、出した。
俺の隣の家に、幼馴染みの女の子がいた。
「ねぇ、覚えてる?」
「あぁ、覚えてるよ」
彼女は俺の大切な人だった。
家族でも恋人でもなかったけれど、愛していた。
「私との約束」
「あぁ、もちろん」
彼女は病気だった。とても重い。
だから、告白したけれど『ごめん』と断られた。
「じゃぁ、うん。よかった」
「うん。だから、大丈夫だ」
嘘だ。全然、大丈夫じゃなかった。
「絶対、幸せになってね」
「あぁ、幸せになるよ」
無理だよ。君がいなきゃ俺は幸せになれない。
「ありがとう。こんな私を愛してくれて。
だから、私を忘れて、幸せになってね……約束だよ」
そして、彼女はそう言い残し、1年前の今日、亡くなった。
彼女の約束を守って、忘れていた。でも、幸せにはなれなかった。
ねぇ、だから、もういいよね。
もう、君を忘れたくないんだ。
君を愛していたという俺のこの思いを……。
あの日、君を思い出してから、俺は少し変わったと思う。
机の上に、君の写真を飾るようになった。
まだ、心は痛いし悲しいけれど、以前みたいに何かが足りないと思うことはなくなった。
何が足りないか、わかっているから。
「行ってくるね、愛してるよ」
END
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