SCENE57 みなとみらい内の大規模建設現場⑥

1/2
前へ
/233ページ
次へ

SCENE57 みなとみらい内の大規模建設現場⑥

 鷹西は、急いで階段を駆け下りていく。  すると、すぐ下の階から夏美の激しい叫び声が聞こえてきた。  「夏美! どうしたっ?!」  必死になって更に下りる。  そのフロアの真ん中あたりに、彼女が前のめりに倒れていた。  「夏美っ!」と叫びながら駆けよる鷹西。座り込み、彼女の上体を抱き起こす。  コロッと何かが転がり落ちた。  これは……?  三ッ谷からのメールに添付されていた画像で見た。確か、BURN(バーン)を中和させるための心臓注射――。  すぐに状況を理解した。  そこにキースと思われる男が倒れている。ピクリとも動かない。おそらく夏美が倒したのだ。だが、その際に、BURN(バーン)を撃ち込まれてしまった……。  なので、彼女は心臓注射を自ら打ったのだ。  「夏美、しっかりしろ」  彼女の頬に手を添えながら呼びかける鷹西。  夏美の瞼が微かに開く。揺れていた瞳が徐々に落ち着き、視線がゆっくりと鷹西の顔に向いた。  「あっ、鷹西さんだ……」  囁くような夏美の声。そして、笑みを浮かべる。  「大丈夫か?」  「だ……大丈夫、だと、思います……。だけど、あんまり、力が……入りません。鷹西さん……私の代わりに、キースに手錠を……かけてください……」  フッと笑う鷹西。こんな状態でも、それを気にするのか……。さすがだよ、夏美。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加