SCENE18 泉山森林公園

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 男があっけにとられたような表情で見つめてきた。夏美が焦ることなく自然な感じでするりと逃げたことに、驚愕している。  「その動き、逃れ方、日本の武術……古武術だね。脱力っていうの?」  感心したように訊きながら、男はファイティングポーズをとった。  「よく知ってますね。でも、流派は内緒、です」  そう応えながら身構える夏美。    「フッ……。なら、捕まえてじっくり聞くさ」  男が鋭いパンチを繰り出してきた。ジャブ、そして下からアッパー。意識を飛ばして気絶させようとする打ち方だ。  夏美は紙一重でそれらを避けると、身を屈めながら男の膝に向けて鋭い横蹴りを繰り出す。  男が飛び退いて避けた。反射神経も戦闘能力もかなり高そうだ。  しばし睨みあう――。  そこで、誰かかが駆けてくる気配がした。  「月岡君、大丈夫か?」  立木だった。男を確認すると、彼も身構える。  欧米人らしいその男は、サッとまた右手を前に出し、立木に向ける。  「立木さん、危ない。避けてくださいっ!」  夏美が叫んだ。  だが男は、立木に対しては何もしなかった。一歩前に踏み出し夏美に蹴りを繰り出す。  立木の方に気を取られていた夏美は避けきれず、腹部を蹴り上げられてしまう。  「きゃぁっ!」  叫びながら後ろに倒れる夏美。急所へのハードヒットは何とか逃れたが、腹部から全身に痛みが広がっていく。次の攻撃を避けるために、転がりながら男から離れた。  しかし、男は追ってこなかった。フッと笑ってから夏美にウインクする。そして、身を翻して走り去った。  「大丈夫か?」  立木が駆けよってくる。ヨロヨロと立ち上がった夏美の身体を支えてくれた。  「あれはいったい、何者なんだ?」  誰にともなく疑問を発する立木。  「もしかして、ファイアーマン・ブラザーズ……」  男が逃げていった方向を見ながら、夏美は呟くように言った。  まだ、身体が震えていた――。
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