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SCENE57 みなとみらい内の大規模建設現場⑥
鷹西は、急いで階段を駆け下りていく。
すると、すぐ下の階から夏美の激しい叫び声が聞こえてきた。
「夏美! どうしたっ?!」
必死になって更に下りる。
そのフロアの真ん中あたりに、彼女が前のめりに倒れていた。
「夏美っ!」と叫びながら駆けよる鷹西。座り込み、彼女の上体を抱き起こす。
コロッと何かが転がり落ちた。
これは……?
三ッ谷からのメールに添付されていた画像で見た。確か、BURNを中和させるための心臓注射――。
すぐに状況を理解した。
そこにキースと思われる男が倒れている。ピクリとも動かない。おそらく夏美が倒したのだ。だが、その際に、BURNを撃ち込まれてしまった……。
なので、彼女は心臓注射を自ら打ったのだ。
「夏美、しっかりしろ」
彼女の頬に手を添えながら呼びかける鷹西。
夏美の瞼が微かに開く。揺れていた瞳が徐々に落ち着き、視線がゆっくりと鷹西の顔に向いた。
「あっ、鷹西さんだ……」
囁くような夏美の声。そして、笑みを浮かべる。
「大丈夫か?」
「だ……大丈夫、だと、思います……。だけど、あんまり、力が……入りません。鷹西さん……私の代わりに、キースに手錠を……かけてください……」
フッと笑う鷹西。こんな状態でも、それを気にするのか……。さすがだよ、夏美。
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