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SCENE2 横浜港 深夜の南本牧ふ頭
深夜の横浜港湾は、凪の状態だった。
南本牧ふ頭の現在拡張整備を行っている場所に、静かにボートが近づいてくる。その甲板に立ち、みなとみらいやその向こうにある川崎の工業地帯の夜景を眺める影が2つ――。
マットとキースの兄弟だ。
彼らが近海まで乗ってきた貨物船は、今、沖を進み離れていく。この時間、この場所の警戒がゆるいということは、日本にいる組織の部下達からあらかじめ知らされていた。なので、乗り継いだボートで、このように優雅に深夜の遊覧と洒落込んでから上陸することもできる。
「綺麗だし、平和そうだな……」
キースが言う。青い目に夜景の光が反射している。
「そうだな。平和ボケした輝き方だ」
マットが皮肉そうな笑みを浮かべた。
「そろそろ着きます」
操舵していた男が声をかけてきた。彼は組織の日本支部とも言える団体の男だ。英語を使っている。キースとマットの兄弟もここまではそうだったが、上陸したら変えた方が良いだろう。
着岸すると、2人は素早く波止場へ上がった。
高級なバンが停まっている。他にも数台の車。そしてその前に数名の男達。直立した姿勢で兄弟を待ち受け、そして恭しく礼をした。
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