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今日集まったのは皆警察関係者だが、所轄の巡査からどこかの署長クラス、そして県警の幹部まで、あらゆる立場の人間が含まれている。それだけでなく、警察庁関係者、つまり官僚まで数名顔を見せていた。都合により来られない者達から寄せられたメッセージや花束を加えると、その数は300を超えている。
それぞれ、これまで何らかのかたちで立木の世話になった者達だ。
すごいな……。素直に感嘆の思いを抱く鷹西。仮に自分があと40年近くを警察官としてすごしたとしても、これほど人々に慕われる存在にはなれないだろう。
時間となり、パーティは開幕した。
花束贈呈をする夏美は、慌てて前の方へと向かっていった。その後ろ姿につい見とれてしまう鷹西。すぐに首を振って我に返る。だが良く見ると、同じように彼女の姿を追う視線がいくつもあった。
「ほらほら」と城木が鷹西の肩に手を置く。「夏美ちゃんを狙っている男はたくさんいるんだから、早くしっかり掴まえておかないと、誰かにとられるぞ」
「うるさいな。おまえこそ、いつまでもチャラチャラしていると見捨てられるぞ。ほら、見てみろ」
鷹西が顎で示す先では、絵里の元へ数名の男性が歩み寄り、談笑をはじめていた。
「平気さ。俺を上回る男なんて、めったにいないから。他の男達をよく見てくれば、改めて俺の良さに気づくだろう。ケンカしたり怒らせてばかりのおまえとは違うよ」
ウインクしながら応える城木。
こいつ、本当にムカつくな……。
鷹西が顔を顰めていると、反対側の肩を三ツ谷が叩いた。
「まあでも、あの破天荒な夏美さんと対等に渡り合えるのは、鷹西くらいだろうからね。あ、もしかして、それを際立たせるためにわざと喧嘩腰になってるの?」
「そんなわけないだろ!」
怒鳴るように言うと、一瞬周囲の目が集まった。ばつが悪そうに首を竦める鷹西。しれっとあらぬ方を向く城木と三ツ谷……。
司会者の挨拶や簡単な説明も終わり、そろそろ立木の挨拶だ。その後、夏美から花束贈呈、徳田の音頭で乾杯、と続く。ふざけ合っている場合ではない。鷹西は気を取り直して前を向いた。
花束を持つ夏美の姿が見え、またしても視線がそこで止まってしまった。
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