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「夏美、大丈夫?」
絵里が、カウンター席に座り微妙に揺れている夏美に声をかける。
「だ、だいりょうふ、で……す」
完全に酔っ払っていた。
絵里の横には城木と三ツ谷、そして長瀬が、苦笑しながら立っている。
「おい、夏美。そろそろ帰るけど、歩けるか?」
鷹西が歩み寄り、様子を窺う。
「あーっ! またぁ、呼び捨てにぃ、したぁ~」
鷹西を指さし睨む夏美。しかし、いつもの怒り顔ではない。目がトロンとしている。
「ごめん、ごめん。ほら、まず水を飲め」
近くにあった水差しからグラスに注ぎ、それを夏美に渡してやる。
「おっ、優しいじゃないですかぁ~」夏美が危なっかしい手つきで受け取る。「いつもそうなら、いいのになぁ~」
プッと笑う三ツ谷。城木や長瀬もニヤニヤしていた。
「こいつ、どのくらい飲んだの?」
絵里を見ると、彼女は首を振る。
「かなり……。そんなに弱い方じゃないんだけど、あれだけ飲めば酔っ払うはずだわ」
「馬鹿正直に、挨拶のたび注がれて飲んでたからだぞ」
「馬鹿、って言ったらぁ、自分が馬鹿なんですよぅ?」
鷹西の言葉に食いつく夏美。口調が微妙だ。いつもの勢いはない。
「わかった、わかった。俺が悪いよ。だから、そろそろ帰ろう。歩けるか? なんなら支えてやるぞ」
鷹西が手を貸そうとすると、夏美は彼の顔をジーっとのぞき込んできた。
「な、なんだよ?」
「なんでそんなに、素直で優しいんですか?」
「い、いや、別に……」
口ごもっていると、更に顔を近づけ見上げてくる夏美。鷹西は大きな瞳に見つめられて焦る。目を伏せるとドレスの胸元が視線に入りドキリとした。
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