SCENE4 ホテル ベイロワイヤル横浜

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 さすがに話をはぐらかしていくのが上手い。青木は思いきって切り込むことにした。どうせ時間はないし、今日は2人が会っていたことだけでも掴んだので、後はおまけだ。何か出てくれば儲けものだろう。  「日本にファントムの協力者がいる。しかも、政界や官界の中枢にも入り込んでいる、っていう噂がありますが、どう思います?」  「ファントム? ああ、あれは都市伝説だろう?」  「いや、惚けないで下さいよ。警察官僚なんだから、確かに存在する組織だっていうことは掴んでいるでしょう? しかも、ここ最近世界で起きているテロ活動のうち半数はファントムが関与しているっていう話もある。日本の警察としても看過できないでしょう?」  「それが事実ならね」  「事実だと思うんですけどね。それに、佐伯議員がファントムへの協力者の一人じゃないか、とも……。彼が理事を務める環境団体『エポック・ワールド』は、実はファントムへの協力団体じゃないか、という噂もありますし」  「君は少し、陰謀論や何かにとらわれすぎじゃないかね? ジャーナリストがそれじゃあ困るね」  「じゃあ、陰謀論ついでに訊きますが、あなたも佐伯議員と同じで、ファントムの協力者じゃないでしょうね。警察官僚がそうだとすると、日本の治安上大問題だ」  「馬鹿らしい」  鼻で嗤い、肩を竦める山岡。  そこで、一台の国産高級車が音もなくやって来て、前に停まった。  運転席から降りてきたのは、山岡と同じ警察官僚で、彼のお気に入りの後輩だと言われる遠山茂だ。もしかして、この遠山も同じ穴の狢なのかもしれない。青木はそう思いながら視線を向ける。  遠山は青木をチラッと見たものの、特に何も言わずに山岡に向けて頭を下げた。  無言で頷くと、山岡は後部座席に乗り込む。
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