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「また後日、ゆっくりとお話をしましょう。その時はよろしく」
青木がそう声をかけたが、何も言わずに前を向く山岡。遠山も素早く運転席に戻り、また音もなく車は走り去って行った。
ふっ、まあいいさ。いずれ真実を掴んでやる。
青木は車を見送り、踵を返す。少し街中を歩いた。
ふと、前から欧米人と思われる男が歩いてくるのが目につく。
特に変わったところはない。ただ、あまり人気のない路地で、たまたまやって来たのが外国人である事に違和感を覚える。横浜という地域性を考えると、珍しいことではないのだが……。
当たり前のようにすれ違う。その時微かに、その欧米人らしい男が「Goodbye」と囁いたような気がした。
背中に違和感を覚える。何かがぶつかったのか? 虫だろうか?
気になり振り返る青木。男が後ろ向きながらも手を振っていた。
なんだ、いったい?
立ち止まり、首を傾げる。そうしているうちに、身体の内部に違和感が……。
熱い――。
背中から徐々に全身に熱が広がっていく。風呂程度だったのが次第に焼けつくようにさえ感じられ……。
うっ、うわぁぁぁっ!
ついに叫び声をあげた。すると、開けた口から炎が吹き出す。
その時には既に、身体のあちこちから皮膚を突き破り、火の手があがっていた。
も、燃える……。俺が、燃えている……。
激しい熱さと痛みが一瞬で襲いかかり、混濁する意識。命が燃え尽きるまで、ほんの僅かの時間しか要しなかった。
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