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「心配すんな。おぶって帰らされた以外はたいしたことない。可愛いもんさ」
え? 可愛い?!
息を呑んでしまう夏美。顔が紅くなっていく。
鷹西も自分の言葉を思い返し、あっ! という顔をする。
「い、いや、可愛い、っていうのは行動というかなんというか、その……」
言えば言うほど、しどろもどろになっていく鷹西。
2人顔を見合わせ、どちらともなく恥ずかしそうに目を伏せた。
たぶん、絵里さんや城木さんがいたら、中学生みたいだ、ってまた笑われるんだろうなぁ……。
ふう、と夏美が溜息をついたところで、班長の徳田がやって来た。皆が立ち上がり「おはようございます」と挨拶する。
徳田は「おう」と手を上げて応えると、奥にある個室に向かった。彼の後には、見慣れない男性がついてきている。がっちりとした身体、精悍な顔つき。それだけで、只者ではないと思われた。
「あれ? 松田さんだ」
鷹西が言った。知っているようだ。
「知り合いですか?」
「ああ。親しいというわけじゃないが、知ってるよ。警察の柔道大会でたまに対戦したことがある。強かったなぁ」
鷹西は大学生時代、柔道でオリンピック強化選手になったことがある。その彼が強いと言うからには、相当の実力だろう。
「確か、機動隊だったはずだけど。それから……」
鷹西が思い出そうとして首を傾げる。夏美はその後を待っていたが、そこで徳田が「月岡、ちょっと来てくれ」と声をかけてきた。
なんだろう?
夏美は呼ばれるまま個室へ向かう。
中では松田が立って待っていた。
夏美が入りドアを閉めるとともに、徳田が松田と頷きあった。
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