SCENE5 神奈川県刑事部警捜査一課 徳田班

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 「彼は松田洋警部補。県警警備部に所属している」  警備部? つまり、公安……。  怪訝そうな表情になる夏美。だが徳田は、そんな彼女に首を振り「きな臭い話じゃない」と言って笑う。  「どういうことでしょう?」  夏美はワケがわからず質問する。  「彼は特殊な任務についているんだ。国内のテロ事案に関する対策室で捜査や調整活動をしながら、神奈川県警のSATの訓練教官もしている」  「SATの?」  まじまじと松田を見た。なるほど、精悍なはずだ。   Special Assault Team(特殊急襲部隊)――通称SAT(サット)。日本の警察の警備部に編成されている特殊部隊だ。重大なテロ事案や、立て籠もりなど特殊な凶悪事件に対して出動する。  現在、警視庁、大阪府警、北海道警、千葉県警、神奈川県警、愛知県警、福岡県警、沖縄県警に設置されている。  主に機動隊員の中から希望者を募るとともに、優秀な者には声がかかり、厳しい試験や訓練を経た後にようやくその任務に就く。正義感や精神力、そして身体能力も優れた者でなければ採用されない。  確か、鷹西も以前推薦されたことがあるらしい。ただ、勝手な捜査を進めたのがわかりご破算になったようだが……。  「松田洋です」  松田が夏美に向かって敬礼をした。彼女も姿勢を正して返礼する。  「今すぐどうこう、という話ではないが、月岡、おまえ、SATに入隊する気持ちはないか?」  徳田が(おもむろ)に訊いてきた。  「え? ええっ?! わ、私がSATですか?」   突然の意外な話に思わず声をあげてしまった。
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