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「まあ、すぐ返事が欲しいと言っているわけじゃない。こういう話があるということを、頭のどこかに留め置いてくれればいい。今日はそれを伝えに来たんだ」
夏美の迷いを見てとったのか、松田がそう言った。
「ありがとうございます。光栄です」
素直に頭を下げる夏美。
「ところで」と松田がくだけた感じになった。「君は、あの鷹西君と仲が良いそうだね」
「い、いやぁ、仲が良いというわけでは……」
「俺の頭を悩ませる事では1,2を争うヤツらだよ」
徳田が苦笑しながら言った。
「そんな……」バツが悪そうに顔を伏せる夏美。そして松田を見た。「鷹西さんとお知り合いなんですね」
「ああ。何度か柔道大会で対戦させてもらった。自分が今まで一度も勝てなかったのは、彼とこの徳田さんの2人だけだよ。今度また、胸を貸してほしいと伝えておいてくれないか」
「え? は、はい」
「彼も、以前SATに推薦されたことがある。自分がまだ隊員だった頃だ。彼の場合は、優秀だけどちょっと破天荒すぎて、規則や規律に厳格なSATには馴染まなかったのかもしれないね。もしかして、君もそうなのかな?」
「い、いや、私は……」
「似たところはあるな」
徳田が頷く。
「そんなことありませんっ!」
慌てて否定する夏美。
松田はフッと笑うと「じゃあ、考えておいてくれ」と言い残し、部屋を出て行った。
SATかぁ……。
複雑な思いはまだ続いていた。
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