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2人の警官が倒れ込んだ前に、キースとマットは仁王立ちする。僅かに右手を振った。
ヨロヨロと立ち上がろうとしていた警官2人の動きが止まる。
「な、なにを……?」
怪訝そうに視線を送る警官達を前にして、兄弟が笑う。
「さよなら……」
揃ってそう言葉を発するキースとマットの兄弟。そして、既に警官達には興味を失ったかのように貯水タンクに向き直る。
「そろそろいいんじゃない?」
キースがそう言うと、マットは「そうだな」と再度スマホを取り出した。そしてアプリを作動させる。
「おい、おまえら……」
背の高い方の警官がようやく立ち上がり、落とされた銃に手を伸ばしながら言う。だが、後から聞こえる悲鳴に動きを止めた。
振り向くと、がっちりした警官が自分の身体をかきむしるようにしながら、まるで獣のように咆哮している。
「どうした?!」
駆け寄ろうとして、立ち止まる。
がっちりした警官の身体のところどころから、炎が立ちのぼってきたのだ。
そんな馬鹿な!
唖然とする背の高い警官。だが、すぐに激しい叫び声をあげることになる。
彼も内側から燃え始めていた――。
突然人体から発生した炎は、警官2人の身体を、まるで貪り尽くすように包み込む。命ごと燃やしていった。
炎に包まれ人の形だけとなった黒い塊――それが崩れていく様子を見て、フッと笑うキース。横から、マットが「そろそろだぞ」と声をかける。
キースが視線を向けると、まず高級ホテルの様々な所から火の手があがった。数々の客室の窓を突き破り、炎が飛び出す。
そして、映画館、カジノ、と順番にエンターテイメント施設に燃え広がり、何かに引火したのか爆発を繰り返す。
しばらくすると、一大リゾート地は火の海と化した。
「次はジャパンだったな?」
マットが訊く。
「ああ、もう少しスリルを味わえるといいな」
キースが嬉しそうに応える。
彼ら兄弟の瞳は、炎を映し紅く染まっていた。
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