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守岡は言い終えると「じゃあ」と手をあげて離れて行った。高台から下り、ちょっとした並木道を歩く。
高井はしばらく待ってから行こうと思い、もう一度工業地域の夜景に目をやる。
その時――。
ぎゃあぁぁぁっ! と激しい悲鳴が聞こえてきた。守岡だ。
「どうした?」
声をあげながら駆け出す高井。
しばらく下ると、木々の間で何かが燃えていた。
な、なんだ? 何が……?
用心しながら近づいていく。よく見ると、炎の中に人の形があるのがわかった。
ま、まさか!
唖然とする。さっきまで普通に話していた守岡が、燃えている。既に命はないだろう。固形燃料のようになっている。
「守岡っ!」
無駄とわかっていても叫んでしまう。
だが、当然応えはない。ただ焦げていくだけだ。
そんな馬鹿な。いったい何が……?
不意に背後に気配を感じた。慌てて振り返る。
そこに、欧米人と思われる男が立っていた。
「なんだ、おまえは?」
慌ててホルスターから銃を取り出す。
男はゆっくりと手を上げた。無抵抗を示すつもりか? だが、どこか余裕があり、不気味だ。
何かが胸にぶつかったような気がした。痛みはない。小さな虫だろうか?
すぐに気を取り直し、男としばし向き合う。
ん? 自分の身体に違和感を覚える高井。
熱い――。
身体の内部に、なぜか熱を感じる。それがどんどん高温になり、そして全身にまわり……。
うっ、うわぁぁぁっ!
高井は自分が燃えあがるのを最後の光景として見る。そして意識は途絶え、黒い炭へと化していった……。
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