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SCENE7 成田空港
「ひっさしぶりだなぁ……」
成田空港の到着ロビーを過ぎ外に出ると、深山早苗は思いきり伸びをした。長い空の旅で身体が強ばっていたので、この開放感が心地よい。
迎えが来るはずだった。まだのようなので、何気なくスマホを見る。
数日前に開催された立木のパーティの様子が、インスタにあがっていた。楽しそうだ。
そんなに長期間離れていたわけじゃないのに、懐かしいなぁ……。
国際刑事警察機構の研修として数週間他国の警察へ行き、帰国し、また他の国へ、という繰り返しだったが、それも終了した。今後は、日本を拠点にしながら必要に応じて他国に出張、という仕事の仕方になるだろう。
国際刑事警察機構は、世界で192カ国が加盟する世界最大の警察機構である。日本の警察庁から出向している者も少なくない。早苗もそういう立場になる。
現時点では、国際刑事警察機構には法執行権限、つまり逮捕権はない。犯罪捜査や犯人逮捕に携わる各国の警察の連携を図り、情報の伝達ルートの役割を果たす。世界中の犯罪のデータをまとめたり、手配情報を出すなどして加盟国の警察当局に協力するのみだ。
だが、国際化が進むにつれて、国境を越えたり、あるいは国境など意味のないような犯罪も増え続けている。どこかの国の警察組織だけでは対応できない事案も急激に増えてきていた。それらに対応するために、国際刑事警察機構も変革していく必要があるという声が高まっている。それなりの部署が必要で、先進諸国の警察からの出向者を増やし育成してく方針が立ち、日本の警察内でもその要員を選出することになった。早苗はそこに応募し、認められたのだ。
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