119人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ
ようやく、黒塗りの公用車が目の前に停まった。警察庁からの迎えだ。
後部のドアが開き、見知った男が降りてくる。国際刑事警察機構の日本支部で責任者を務める、仲谷浩だ。日本の警察内での階級は警視長で、キャリアである。だが、偉ぶったところのない好紳士だった。
「すまんね。待ったかな? 思いの外渋滞していたもので遅れてしまった」
仲谷が申し訳なさそうに言う。
「いえ、こちらも到着が遅れたので、ついさっき来たところです。わざわざ迎えに来ていただいて、恐縮です」
運転席からも1人降りてくる。屈強そうな男性だった。キャリアとは違う雰囲気。SPだろうか? 会釈したが特に名乗りはしなかったので、早苗も頭を下げるだけにした。
仲谷に促され、後部座席に乗る。スムースに発進した。
「例の会議が無事終えられるまで、君に対する護衛もつけることになった。と言っても、目立つのもまずいので、最低限にせざるを得ないが」
車が走り出してすぐに、仲谷が切り出してきた。
「わかります。それだけでもありがたく思いますよ」
頷き軽く笑みを浮かべる早苗。
「しばらくはSPが遠巻きに見守る」運転席の男を手で示す仲谷。「随時交代していく。それと同時に、君の近くにいて業務を補佐しながら守るという者も一名つけることにした。勤務中だけ傍らにいて、プライベートの時間は離れるという形になる」
「そこまでしていただけるとは、心強いですね」
「君の今回の任務は、そのくらい重要だということだよ」
国際刑事警察機構の研修が終了すると同時に、早苗には任務が与えられた。横浜のみなとみらいで、非公式かつ極秘に行われる会議がある。そのための調整と、国際刑事警察機構から持ち帰ったデータをその会議の席で配布する役割だ。
最初のコメントを投稿しよう!