SCENE7 成田空港

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 極秘会議は、今はまだ表向きには世界的にも噂、あるいは都市伝説レベルにある「ファントム」というテロ請負組織への対策のために開かれる。  恐ろしい存在で、実はすでに世界中で暗躍している。各国警察としても看過できない。足並みを揃えて対策に努めなければならない。  世界的な脅威となりつつあるファントムに対する会議を開催するということで、準備は極秘に進められているが、それでも不安は残る。ファントムの情報網は、各国の中枢部にも及んでいるかもしれない。厳重な注意が必要だ。  「君の身近につける、いわゆるボディガードについては、選出を任せるよ」  「え? 私が選ぶ、ということですか?」  「そう。身辺にいて仕事を補佐しながら守るわけだから、よく知る人物の方がいいと思ってね。神奈川県警には話を通してある。頼りになる警察官を選びたまえ。もちろん本人や所属部署と交渉してOKであれば、だがね」  強く頷きながら仲谷が言った。  早苗は迷う。頼りになる人材、いざというときに守ってくれる。場合によっては危険を伴う……。  最初に思い浮かんだのは、夏美のことだった。ただ、親しすぎるような気がした。ある程度、距離を保っていられる方がいい。それに、近隣まで迫る相手がいた場合、威圧感を持っている方が良いだろう。夏美では可愛すぎる。男性の方がふさわしい。だとすると……。  「では、本人さえよければ、神奈川県警刑事部捜査一課の、鷹西惣一郎巡査部長にお願いしたいです。彼は同期で、頼りになることは十分知っていますから」  「わかった。交渉してみよう」  そう応えると、前を向く仲谷。日本の警察組織内だけでなく様々な方面と調整を行わなければならない、難しい立場にある。実直そうな彼はふさわしいと感じられた。  久しぶりに帰ってきたという安堵感と、これからの任務に対する責任感。早苗はそれぞれを胸に抱きながら、車窓に流れる景色を眺めていた。
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