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ん……?
微かな明かりにより、前方に人の姿が見えた。こちらに向かってくる。
ガッチリしていて大柄な男だった。よく見ると、どうやら欧米人らしい。
それほど広い路地ではない。ぶつかる心配はないが、とりあえず白石はもう少し右に寄った。
すると、相手は気さくに手を上げ逆方向に行く。「Goodbye」と言っているようだ。
何か、背中のあたりに違和感を覚えた。
なんだ?
思わず振り向く白石。
欧米人らしい男も数メートル先まで離れると振りかえった。また手を上げる。
不意に、身体の内部に熱を感じた。背中のあたりから徐々に広がっていく。
両手足にまでその熱は伝わり、いつしか高温で耐えられないほどになった。
「うっ、うわぁぁっ! 熱い。あつ、い……!」
思わず体を掻きむしるようにする。
目の前で、自分の前腕の皮膚を突き破り、炎が飛び出してきた。背中や胸、腹、腰からも……。衣服もあっという間に燃えていく。
あっ! ああぁ、ぎゃあぁぁぁっ!
口や鼻、そして目からも炎が飛び出し、ついに白石の全身が包まれた。彼の内部から燃えあがったのだ。
その炎は、夜の闇をしばらく照らし続けていた。
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