SCENE9 神奈川県警刑事部捜査一課 徳田班

4/4
前へ
/233ページ
次へ
 「ああ。やり方は任せるから、2人で調べてみてほしい。どちらも他に抱えている案件もあるだろうから、合間を見てでいい。とりあえずできる範囲でやってくれ」  「班長は、これが殺人である可能性は低くはないとお考えなんですね?」  グッと身を乗り出すようにして訊く夏美。自身もそのような印象を抱いていた。  「この短い期間で4人、犠牲者が公安関係者とジャーナリスト2人ずつ……。怪しむなという方が無理だろう」  「きな臭い感じもしますしね」  立木が徳田の言葉に頷きながら言った。  「きな臭い、ですか?」  夏美が怪訝な表情になる。応えたのは徳田の方だった。  「殺人の可能性が低い、と方針が決められたのが早すぎる気がする。報道規制についてもかなり厳密にされているし、そもそも警察内部でさえ秘匿されている感がある。月岡も、今はじめて知ったわけだろう?」  確かに、4件もの不審死があったのに、神奈川県警刑事部にいる自分が知らなかったというのは不自然かもしれない。  「そうですね。公安捜査官とジャーナリストが犠牲者ということは、殺人の場合、何か同じことを調べていて、それが原因でということも……。もしかしたら、犯人の側には警察に圧力をかけられるほどの後ろ盾が……」  夏美がそう言うのを、徳田が手を上げて制する。  「まだそこまで考えを進めてしまうのは早い。あくまでもニュートラルな状態から始めるんだ。ただ、その可能性もあるというのは頭の隅に置き、充分気をつけてな」  「わかりました」  しっかりと応え、立木と視線を交わす夏美。  「よろしく頼むよ」  立木からそう言われ改めて居住まいを正す。  「こちらこそよろしくお願いします」  頷き合うと、2人は退室し、早速県警を出た。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加