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「鷹西と一緒じゃなくて、残念だったね」
助手席から立木が声をかけてきた。
「立木さんまでそんなこと言わないでください。別に、誰と一緒でも事件に対する気持ちは同じです」
「まあ、それはそうだろうが、君たち2人は特に良いコンビだと思うんだがな」
「普通ですよ」
「そんなことはないだろう……」フッと笑う立木。「最近は、2人だけで動いて班長によく怒鳴られているじゃないか。組みやすいからそうしているんだろう?」
「い、いや、それは……」
口ごもる夏美。確かにそうだった。この間も、怪しいショーパブに2人だけで捜査に入り、大騒動になって怒られた。あの後、夏美は資料室の整理整頓を、鷹西は柔道場の清掃を、それぞれ3日間やるようにとペナルティが課され、その間は県警から外出禁止にされてしまった。
「君と鷹西を見ていると、若い頃の徳田班長や、君のお父さんのことを思い出すよ」
「えっ?」
突然意外なことを言われ、夏美は驚き立木を見る。
「月岡君……君のお父さんだが、やっぱり活動的でね。当時の徳田班長とはライバルでもあり、時に組んで捜査に当たっていたが、自分達だけで行動して先輩や上司によく怒鳴られていたよ。それでも、検挙率が高いので一目置かれていた。まさに、今の君たちのようだ」
「そうだったんですか……」
不思議な感覚で話を聞く夏美。あの徳田班長が、今の自分達のようだったというのは意外だ。父がそうだったというのは、なんとなく感じていたが……。
「親子なんだから、娘の君が似ているのは当たり前だが、鷹西とも似ているところがあったな、月岡君は」
ドキリとする。前に徳田からも同じようなことを言われたことがある。
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