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父と鷹西さんが、似ている……そう聞くと、妙な感じだ。
「普段は厳しく、犯罪には徹底的に立ちむかうが、被害者だけでなく逮捕した犯人であっても、改心の兆しがあれば親身になって寄り添っていた。良い刑事だったよ、本当に」
胸が熱くなってきた。涙が零れそうになる。
「おっと、すまんな。今話すことじゃなかった」
夏美の様子が変わったからか、立木が慌てて言った。
「いえ、大丈夫です。すごく嬉しいです。父のことを聞かせていただけるのは……」
私もお父さんみたいに、刑事になるっ!
そう主張したのは、まだ小学校低学年の頃だ。父は嬉しそうな、しかしちょっと困ったような顔をしていた。
危ないことがいっぱいあるし、怖くて悪い奴がたくさんいるんだぞ――。
強くなるっ! 悪い人に負けないくらいに――。
そうか……。でも、強いだけじゃダメだぞ。優しくないと――。
うん。優しくもなる。どうすればいいのかな?――。
そうだなぁ。人の気持ちがわかるようになることかなぁ? 共感、っていうんだ――。
きょうかん――?
誰かが悲しんでいたら同じように悲しくなり、誰かが喜んでいたら嬉しくなる。そんなふうに、人の心に寄り添うことだ。無関心、つまり何も感じないような人間ではダメだと思うんだ。困っていたり苦しんでいる人を見ても心が痛まないようじゃいけない。逆にそれを喜ぶような人間もいるが、そんなのは最低だ。絶対にそうなっちゃいけない――。
うん。わかった――。
よしよし、と言って強く頭を撫でてくれた、あの時の記憶が蘇る。
そう、私は父のような警察官になりたい……。
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