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SCENE12 神奈川県警科学捜査研究所
夏美と立木が人体自然発火現象による不審死の件を調べるように言われてから、2日目となっていた。
それぞれ他に抱えている案件もあるので、時に一緒に、時に手分けして被害者の身辺を調べることにしたが、その合間に、夏美は科学捜査研究所の三ッ谷と長瀬を訪ねた。
三ッ谷はまだ若いのだが、神奈川県警科学捜査研究所内に彼個人のラボをつくり、そこで調査や彼独特の情報収集、あるいは何か捜査に活かせる新技術の研究等をしている。
これまで多くの刑事達に協力し、数々の事件を解決に導いてきた実績があるからそんなこともできる。すごい人だ、と改めて感じた。
「お邪魔します。はい、差し入れ」
中華街で買ってきた点心詰め合わせを手に、三ッ谷のラボのドアを開ける夏美。
「おっ! ありがとう、夏美さん。いや、邪魔どころか、いつでも大歓迎だよ」
明るい笑顔で迎え入れる三ッ谷。少年のようなその姿は、県警内に名を轟かせる科学捜査官にはとても見えない。
「立木さんのパーティ以来ですね。あの時はだいぶ酔っていたようですが、次の日とか大丈夫でしたか?」
三ッ谷と仲の良い長瀬も当然待ち受けていて、訊いてきた。
「そ、その話は、言わないでください。あれは近年まれに見る失態です……」
「そうかなぁ、ああいうところも可愛くていいなぁ、って思ったけど」
長瀬にさらっと言われ、ますます恥ずかしくなり夏美の顔が紅くなっていく。
「鷹西の背中で眠ってる夏美さんの顔、ホントに可愛かったなぁ」
三ッ谷も被せて言ってくる。
「もう、本当にやめてください。そんな話はいいんです。それより、本題に入りましょう」
慌てて早口で言う夏美。顔の火照りがまだ残っているが、無理にも話を進めないときりがなくなる。
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