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「私にわかるわけないじゃないですか」
そう応えながら首を振る夏美。
「だめだなぁ、敏腕刑事を目指すなら、そこは何か応えられないと……」
「何でそんな意地悪なこと言うんですか?」
ムッとして三ッ谷を睨む。すると彼は、フフッと言って吹き出し始めた。
「ごめん。そういうむくれた夏美さんの顔がまた可愛いから、つい……」
「もう、この人ひっぱたいていいですか?」
夏美が長瀬に訊く。三ッ谷は大袈裟に手を振って「うわぁ、助けて」と戯けた。
長瀬は楽しそうに笑い、そして話を戻す。
「まあ、わからないのがあたりまえなんですけどね。わかっていたらもう解決できるだろうし。ただ、一つだけ気になることがあるんですよ」
「気になること?」
夏美と三ッ谷が顔を見合わせてから、視線を長瀬に向ける。
「今回はかなり不審な死亡案件となってますから、けっこう綿密に調べているらしいんですよ。ほとんど燃えているけど、残された部分について。それを見ると、リンとマグネシウムの値が人体としては異様に高いようなんです。もちろん、焼死体ということで通常とは違っていて当然なんですが、それにしても気になる数値です。もしかしたら、通常のリンやマグネシウムとは微妙に違う変異物質が混じっているのかもしれない。実際自分でデータ解析をしたわけじゃないから、何とも言えないけど……」
「それが、この不審死に関係あるかも、っていうことですか?」
勢い込んで訊く夏美。何か少しでも謎を解くヒントがほしい。
「どちらの物質も、水に反応して燃焼する性質を持っています。もちろん一定の状況下にあれば、ということですが」
「水で、燃える……?」
目を丸くして驚く夏美。
「成人男性の場合、人体の60%は水分だって言われてるよね。その変異したリンやらマグネシウムやらがどこかで発生して、体内に流れ込んで反応してしまったら、燃えることもあり得るのかな?」
三ツ谷が訊くと、長瀬は更に難しそうな表情になった。
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