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「うん。でも、そんなことが自然な状況で起こるとは思えない。変異物質なんかも、そう簡単にできるものではないしね。それが4件も連続して起こるなんて異常だよ。もし本当に、その変異物質が原因だとするなら、自然現象じゃない」
「何者かが意図して、っていうことですか?」
夏美が恐る恐る訊くと、長瀬は「その場合は、そうなるでしょうね」と頷く。
息を呑み、夏美と三ツ谷が目を見合わせる。
「水に反応して燃える物質を、何らかのかたちで人に投与して焼死させる、なんていうことができるのかな?」
三ツ谷が首を傾げる。
「前代未聞だね。でも、不可能じゃない。以前どこかで、それに近いような話を聞いたことがあるんだよなぁ……」
何かを思い出そうとして目を瞑る長瀬。
「えっ? これと似たような事件があったんですか?」
勢い込んで訊く夏美。長瀬は手を上げて彼女を抑える。
「いや、そうじゃないんです。ただ、そういう危険な物質をつくろうとしたとか、実際つくったとか……」
彼はもどかしそうに首を傾げ、必死に思い出そうとしている。だが、なかなか難しいらしい。
「いずれにしても、もし何者かが意図してその4人を燃やしたんだとしたら、それはとんでもなく恐ろしい奴だよ。夏美さん、慎重に捜査を進めないと」
三ッ谷が真剣な表情になる。
「そうですね。被害者の4人が公安捜査官とジャーナリスト、っていうのも気になります。なにか重大な犯罪や、大きな闇を追っていたのかもしれない」
険しい表情で応える夏美。
何者かが、特殊な方法で人を燃やしてしまう……。そんなことを許していいはずがない。
3人とも深刻そうに溜息をつく。いつしかラボの中を不穏な空気が漂っていた。
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