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鷹西と夏美は、神奈川県警刑事部捜査一課強行班係で、同じ徳田班に属している。どちらも破天荒で、何をしでかすかわからないと先輩や上司から苦々しい目で見られていた。
だが、鷹西からすると、彼女と一緒にしてほしくはないと感じている。
俺はあいつほど、無鉄砲じゃないはずだ……。
容姿端麗で「捜査一課の可憐な花」と異名をとる夏美だが、最近はそのじゃじゃ馬ぶりがよく知られるようになり、新たに「可愛さの無駄遣い」とか「危険な花」とさえ言われるようになったヤツなのだ。一緒に組んでいて、何度肝を冷やしたことか。今もたぶん……。
「待ってくださいっ!」
凜とした声がスーパー内に響き渡った。
やっぱり、と頭を抱える鷹西。
「その子を放してください」
両手をあげて、1人の女性が危険な強盗犯5人の前に立つ。月岡夏美、まさにその人だった。小柄で華奢、一見するとアイドルか若手女優かと思われるほどの美貌で、とても刑事には見えない。
「なんだ、おまえ?」
男のうち1人が獣のような顔を向けながら言った。
「私が代わりに人質になります。だから、その子を放して」
「何だとぅ?!」
強盗犯達が夏美を一斉に睨む。
だが夏美はまったく怯まず、ゆっくりとジャケットを脱いだ。そして、警察手帳や警棒など小物が入っている機能性ベストも脱ぎ、フロアにそっと置く。Tシャツとデニムだけになり、またしても両手をあげた。彼女の身体のラインがよく見える。
「何も持っていません。私を人質にしてください。そして、その子を放して。おねがいします」
ゆっくりと男達に向かって歩を進めながら、夏美が言う。
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