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「立木さん、私はそろそろ行きますが、5分後にこれから言うナンバーに電話をかけてください。私の上司があなたに話をするそうです」
相変わらず会話をしているような素振りなど全く見せず、津山が言った。
一瞬驚く立木。だがすぐに表情を無にし「わかりました」と応える。もしかしたら、2人の会話は、その上司とやらに何らかの方法で聞かれていたのかもしれない。津山に任せていたが、自らが出てくる気になったのか?
あるナンバーを言うと、津山はのんびりとした仕草で立ち上がり、歩き始めた。
キッチリ5分待つ。そして、立木は言われたまま先ほどのナンバーに連絡してみた。
すぐに「はい」と男性の声。
「立木です。津山さんに言われてかけました」
「私は彼や白石君がいた班の責任者を務めている、藤田という者です。まどろっこしいことをさせてしまい、申し訳ありません」
「いえ、かまいません。お話があるということですが?」
「あなたや、あなたの所属する県警捜査一課強行犯係の徳田班については、噂も聞いています。優秀な刑事達を揃え、ある意味独立したようなところもあるようですね。組織のしがらみや上層部の意向などにとらわれることなく、犯罪に立ち向かっている。その姿勢は素晴らしいと思います」
「それは、ありがとうございます」
素直に応えた。たぶんこちらのことを調べたうえで言っているのだろうが、公安を相手にそんなことを気にしていても仕方ない。
「おそらく、このままこの件から手を引いてほしいと言ったところで、納得されないでしょう。ならば、私から全てをお話しします。今我々が調べていることの詳細を、包み隠さず。ただ、それを聞いたら、後は我々に任せてほしい」
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