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SCENE14 週刊潮流編集部
久しぶりに訪れる週刊潮流編集部は、以前と変わらず雑然としていた。
午前中ではあるが、何人かが退社していく。室内に残っていたのは、責任編集者という肩書きを持つ峰岸肇1人だった。その彼も、くたびれた状態でイスに座りボーとしている。
「突然すみません」
夏美は遠慮がちに声をかけた。
「ん? おっ!」夏美を見て身体を起こす峰岸。「これは、可憐な花の夏美さん。嬉しいねぇ、徹夜明けで魂が抜けちゃいそうだったんだけど、目が覚めたよ」
「徹夜明けだったんですか?」
考えを巡らせる夏美。確か、週刊潮流は3日後が発売日だったか?
「うん。ついさっき、次号を印刷にまわすことができたんだ。とりあえず、ホッと一息。で、夏美さんは、今日はどうしたの? もしかして、いよいよグラビアやってくれる気になった?」
「い、いえ、それはないです」
苦笑して手を振る。以前の事件で知り合ったこの編集者は、夏美を雑誌のグラビアに使いたくて何度も声をかけてきていた。
「次の夏に流行りそうな水着、夏美さんに似合うと思うんだけどなぁ。こうさぁ、キュッと締まったヒップなんて、際立つだろうなぁ」
徹夜明けでテンションが高まっているのか、峰岸は夏美の身体をのぞき込むようにしながら言う。
「み、水着なんてとんでもないです」慌てる夏美。セクハラで逮捕してやろうか、という考えがよぎるが、とりあえず今は我慢しておく。「そんなことより、ちょっとお訊きしたいことがあって……」
「え? なんかの事件?」あからさまに残念そうな顔をする峰岸。「今日は1人だから、いい話が聞けるかと思ったんだけどなぁ。そういえば、鷹西君はどうしたの?」
「別の任務についてます」
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