SCENE14 週刊潮流編集部

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 鷹西の父は、峰岸も尊敬する優秀なジャーナリストだったそうだ。それもあって、彼のことも自分の世界に引き入れたいと思っているフシがある。  鷹西本人も、実は大学卒業前に、警察官になるかジャーナリストを目指すかで迷った時期があるらしい。今も、組織の形式を重んじる警察より、そちらの道の方が自分に合っていると思うこともあるという。  もしかしたら、鷹西さんは警察を辞めていく人なのかもしれない……。  そんなふうに考え、ふと寂しく感じることもあった。  「なに切なそうな顔してるの? 彼と一緒じゃなくて元気が出ないのかな?」  峰岸が夏美の表情を読みとったかのように言う。  「そ、そんなこと、あるわけないじゃないですかっ!」  「必死に否定するところが怪しいんだよなぁ。グラビアデビューした後しばらくは、恋愛関係は極秘でお願いしますよ。せめて写真集を出すくらいまでは我慢して……」  「だから、どれもこれも、全然あり得ないです!」思わず声を荒げる。このままではキリがない。「伺いたいことがある、って言ってるじゃないですか!」  「わ、わかった、わかった……」大げさに仰け反るような仕草をしながら苦笑する峰岸。「で、何の事件?」  「もう……」ふうっ、と短い溜息をつくと、夏美はようやく本題に入る。「青木旬一さんというジャーナリストが、不審な死を遂げています。峰岸さんと親しかったと聞いたので、彼がどんな事を取材していたのか、参考までに聞きたくて」  「ああ、青木君、燃えちゃったね……」  戯けたふうに言っているが、峰岸の瞳に悲しみや悔しさの色が見えた気がした。  「お悔やみ申し上げます」  改めて頭を下げる夏美。まずそうすべきだったと反省した。  「若いのにしっかりしてるね。そういうところもいいんだよなぁ。人柄含めて、絶対人気出ると思うんだけどなぁ……。まあ、それはいいとして、彼の死に何か事件性があると考えているわけだね?」  さすがに敏腕ジャーナリストでもある峰岸だ。気軽な口調ながら視線は鋭い。
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