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「いえ、まだ何とも言えませんが……」
「何もないのに調べようとするわけないもんね?」
「不審死で、原因もわからないんです。なので、あらゆる可能性は考えておいた方がいいとは思ってます」
「それだけじゃないでしょ?」
探るような視線を向けてくる峰岸。
「……というと?」
「青木君だけじゃない。不審な焼死をしたのは他に3人いる。そのうち1人は同じようにジャーナリストだ。残り2人は警察官。おそらく公安じゃないかと僕は睨んでいるんだけど、どうかな?」
同じような焼死が他にもあったことは、峰岸なら掴んでいるだろうと思っていた。だが、公安捜査官が2人含まれていることを言い当てたのはさすがだ。いや、もしかしたら、青木の取材対象を知っているからだろうか?
「亡くなった警察官が何を調べていたのかは、私にはわかりません。ただ、青木さん達と同じか、関連することだったのではないか、とは思っています」
「つまり、その調べていたことのために命を落とした――殺された、と思っているわけだね?」
「さあ? むしろ、峰岸さんがそこまで考えてしまうのはなぜなのか、それを知りたいですね」
真っ直ぐに峰岸を見る夏美。彼も見返してきた。
しばし無言の時が流れる――。
先に視線を逸らしたのは峰岸だった。「コーヒー、飲む?」と笑みを漏らしながら言う。
夏美はチラリと給湯室らしき方を見る。洗い忘れられたマグカップやどんぶりがシンクに山盛りになっていた。
「い、いえ、けっこうです」
苦笑しながら手を振る。
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