SCENE14 週刊潮流編集部

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 「いや、心配しなくていいよ、自販だから」  峰岸は笑いながら立ち上がると、一旦部屋を出て缶コーヒーを2本買ってきた。すぐそこにロビーがあって自販が並んでいたのを思い出す夏美。  「はい」と1本差し出し、そして再び席に戻る峰岸。徐に缶を開け、グビグビと飲み始める。  躊躇いながらも受け取り肩を竦めると、夏美も開けて飲み始めた。微糖のアイスコーヒーだった。苦みが喉を通っていくのが、思った以上に心地いい。鋭さをクッションで包んだような峰岸との駆け引きで、緊張していたのかもしれない。  「この焼死事件の詳細について、ケリがついたらでいいから独占取材させてくれる?」  缶コーヒーを飲み干してすぐ、峰岸が言ってきた。  「私にですか?」  「そう。事件に関わった刑事として。それならこちらも、できる限り協力するけど?」  ウインクする峰岸。  「話せる限りということになると思いますけど? 顔も名前も伏せていただいて……」  「そっちの取材はそれでいいですよ。その代わり、グラビアの方は露出をなるべく多めで……」  「い、いい加減に……」飲み干した後の缶を投げつけようとする夏美。  「まあまあ、その交渉はまたいずれ、ということにして……」  峰岸がそう言って空き缶を放る。少し離れたゴミ箱に見事にシュートを決めた。  調子を狂わされた感じの夏美が目を戻すと、峰岸はイスに背中を預けながらこちらを見ている。態度は相変わらず飄々としているが、その目つきは真剣そうだ。こうやって、相手にペースを握らせずに話を進めるのが、彼の得意とするところなのだろう。  「青木君は、ファントムがどれほど日本に入り込んでいるか、取材していたんだ」  「ファントム? なんですか、それは?」  突然本題に入ったかと思うと、聞き慣れない言葉が飛び出してきた。戸惑う夏美。
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