SCENE14 週刊潮流編集部

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 「そうか、知らないか。まあ、徐々にその名が浸透しつつあると言っても、まだ陰謀論レベルだからなぁ。公安でもなければ聞くこともないかもね。ファントムは……」  概要を説明してくれた。それを聞き、夏美は驚愕する。  「そんな、思想も何も持たずにテロの実行だけ請け負うような組織があるんですか? それも、世界規模で……」  「あるらしいんだよ。先月初め頃に、インドネシアの島でエンタテイメント施設やらホテルを大火災に陥れたテロがあったでしょ? あれ、中東の過激派が犯行声明出したけど、実際にテロを実行したのはファントムの構成員だと言われている。破壊活動だけ業務委託した、っていう感じかな?」  自分は目の前の犯罪を追うことに精一杯で、国際情勢などについては疎い。だが、そのような組織が台頭してくるとなると、知らないでは済まされない事態も起こり得るだろう。そう思うと、夏美は自然と溜息をついた。  「そんな組織が、日本にも入り込んでいると言うんですか?」  「うん。実際、先進諸国の政界やら財界に協力者を増やしつつあるという話もある。青木君は、そのあたりを調べていた。あと、もう1人焼死したジャーナリストは守谷武さんだよね? 彼は、一流の戦場カメラマンで、世界中の危険地帯で取材することが多かった。当然海外の裏情報にも精通していた。公安警察に情報提供して協力していたことも考えられる。その中には、ファントムに関わる情報もあったんじゃないかな?」  守谷は公安捜査官の高井とともに、川崎の同じ場所で焼死体で発見された。峰岸の想像はたぶん正しいだろう。そして……。  「ファントムのことを調べていたために、焼死させられた? そう考えているんですね、峰岸さんは?」  「おそらくそうじゃないか、とは思ってる。ファントムには破壊や暗殺のプロが何人も所属している。その中には、人を簡単に燃やすような武器を持つ者もいるのかもしれない」  昨日三ッ谷や長瀬と話していたことを思い出す。それが現実味を帯びてきた。
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