SCENE14 週刊潮流編集部

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 「青木さんは、具体的にはどのようなことを調べていたんでしょう? ファントムと関係のある人物や団体をピックアップしていた、とかですか? もしかしたら、もうだいぶ相手に近づいていたのでは?」  勢い込んで訊く夏美。青木がその取材対象に近づいたために殺されたという可能性は、まだどの程度のものかわからない。ただ、具体名がわかれば調べてみる価値はある。  しかし、峰岸は難しそうな顔をして首を振る。  「いくつかの人名や組織名も聞いているけど、きちんと話をしたわけじゃないんだ。彼との雑談中に出てきたものだから。それらの中から誰を、あるいはどこを調べることに特に躍起になっていたのかはわからない。だから、もう少しまともに調べてから話しますよ」  「それは……」  こちらに任せてください、あるいはこちらでも調べます、と言おうとしたが、峰岸が手を上げて制したので口をつぐんだ。  「そのくらいはしたいのさ。このまま、はい、あとは警察にお任せします、っていうんじゃあ同じジャーナリストとして情けないし申し訳ない気がする。少し意地をはらせてよ。今日のところは、ファントムの名前を覚えたところまでで我慢して」  そう言ってから、ニッと笑う峰岸。夏美は不満顔ながらも仕方なく頷いた。  「ある程度のメドがついたら、必ず教えてくださいね」  「わかってますよ。約束する。破ったら、グラビアの話はご破算でいいよ」  「そんな話はそもそもありません」  強く言い置いてから、夏美は週刊潮流の編集部をあとにした。  しばらく歩いていると、スマホが震える。立木からのメールだ。  「白石の上司と、明日話をすることになった。詳細を説明するから、捜査は見合わせてほしい、ということだ。もちろん従うつもりはないが、会ってみようとは思う。班長にも話は通した。君も時間をあけておいてくれないか?」  「わかりました」と返信した。  少しずつ、近づいているような気がする。手応えと言うほど強いものではないが、気配を感じる。  ファントム……そんな組織が、本当にあるのか……?  背筋に冷たいものを感じながら、夏美は歩を早めていった。
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