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夏美、何やってんだ……?
険しい表情で彼女を見つめる鷹西。
彼女は一旦振り向いた。そして、鷹西に向かって僅かに頷く。任せてください、とでも言っているようだった。
もうじき機動捜査隊も駆けつける。それを待って行動するのがセオリーだが、彼女はおそらく、人質になった女の子を少しでも早く助けたいと思ったのだろう。
「ふざけんな。いいから、早く車を用意しろ。スピードの出るヤツだぞ」
さっきから男達が要求していることだった。さもなければ、少女を殺すと言っている。
「そんな小さな女の子を人質にしたら、面倒ですよ。泣き叫ぶし、言うことは聞かないでしょう。それより、私だったらおとなしくあなた達に従います。これからどこかへ逃げていくつもりなら、その方がずっとやりやすいと思いますよ? だから、その子の代わりに私を人質にしてください」
夏美が訴えかけていた。男達の視線が、彼女に釘づけになる。
捜査一課の可憐な花――その容姿は男達を惑わせるには充分だった。可愛らしさはもちろん、華奢で小柄ながら、バストからウエスト、ヒップまで流れるラインは魅惑的で、ヤツらには眩しいほどだろう。
俺だって、これまで何度目を奪われたことか……って、いや、何考えてるんだ? そんな場合じゃない。
慌てて首を振る鷹西。
「そ、そんなに言うんだったら、いいぜ。そうしてやる」
少女を押さえていた男が言った。その目は明らかに、夏美の魅力に惹きつけられている。
「ありがとうございます。じゃあ、その子を放して」
夏美が一旦立ち止まり言った。
男がまだ少女を押さえながら、ナイフで夏美を手招きする。もっと近くへ寄れ、ということだろう。
夏美は指示に従い、近づいて行った。そしてあと少しで飛びかかってこられるくらいまでになると立ち止まり、キッと男達を睨む。
「さあ、その子を放して。約束ですよ」
「わかったよ」
夏美に言われて、男が少女を放した。そしてその背中を押す。
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