SCENE15 国際刑事警察機構日本支部事務所の一つ

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SCENE15 国際刑事警察機構日本支部事務所の一つ

 鷹西は長時間かけて資料を読み終えると、ふうっと一息ついた。そして機能的な室内を見まわす。そろそろここにも通い慣れてきた。  しかし、任務については、未だに慣れるまでには到らない。横浜市内の様々な場所をまわり、いろいろな人間とやりとりをするいつもの仕事とは明らかに違う。  あと少しで夜の8時。早苗と鷹西、それぞれの勤務も終了する時間だ。とはいえ同期の仲で、その後しばらくお茶をしながら軽く雑談するのが常になっていた。  とりあえず自分のコーヒーをいれる。チラリと早苗の方を見た。彼女はモニターに目を向けたまま、真剣そうな表情をしている。  何かあったのか?  気にしながら、コーヒーを手に彼女の隣のデスクにつく。  早苗は今、この事務所近くのホテルに宿泊していて、朝と帰りはSPとともに移動する。そして、SPは事務所の側で警戒をしているはずだ。当然交代制で、鷹西が見ただけでも4人いた。朝と帰りが違う者であることが多い。  鷹西は、事務所内で早苗の業務を補佐として手伝いながらガードしている。そしてたまに彼女が移動する際は、必ず側につく。その場合、SPは少し離れた場所から2人をガードしている。本来の警護の仕方とは異なるが、国際刑事警察機構(インターポール)所属の警察官ということで、特例なのだろう。  早苗は多量の事務をこなし、国内の警察官僚や他国の外交官などと接見することが多い。鷹西にとっては異世界の業務に思えた。だが、補佐している分にはなかなか面白い。  「ねえ、鷹西君」相変わらずモニターに視線を向けたまま彼女が声をかけてきた。「なんか、悪い予感がするんだけど」  「え?」怪訝な顔をする鷹西。そんな事を言われるとこちらも不穏な気持ちになる。「不正アクセスでもされたのか?」  「違う違う」と軽く手を振る早苗。「そうじゃなくて、夏美達が調べている、謎の焼死についてのこと」
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