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「ああ、それか。何か気になることが?」
コーヒーを一口飲んでから訊く。確か、どこかで同じようなことがあったとか言っていたが……。
「ようやく見つけたわ。一ヶ月くらい前、インドネシアのルピス島のホテルやカジノを含む施設が、大火災に見舞われるテロがあったでしょ?」
「そういえば、そのテロもファントムとやらが委託を受けて行った可能性があるらしいな」
早苗についている間、彼女の話を聞いたり資料を読んだりして、様々な情報を得た。これもそのうちの一つだ。
「そう。その時、近隣の街や森の中から、何名かの焼死体が発見されているの。みんな警察官」
「なんだって? まさか、その焼死体が……」
「うん」深刻そうな表情でこちらを向く早苗。「全員、身体の内側から火の手があがっている、人体自然発火現象によるものらしいわ。火災を起こした破壊テロの近くだから、関連のある可能性はあるけど、詳細は未だ不明みたい」
鷹西は得体の知れない闇が迫ってくるような不快感を覚え、ゴクリと唾を飲み込む。
「オカルトの範疇だった人体自然発火現象が、ここ最近頻発しているっていうことか。それも、日本とインドネシアという限られた場所で」
明らかにおかしい。自然現象とは言いがたい。しかもインドネシアの場合、テロがあった場所のすぐ近くだ。まさかこの日本でも……?
「もしかしたら、かなり深刻な状況かもしれない」
「深刻な状況、っていうと?」
どんどん表情の険しさが増していく早苗につられ、鷹西の不安は更に高まる。
「未確認情報ではあるんだけど、グリーン・プラネットという過激な環境保護団体が、ファントムにテロの依頼をしたという噂があるの。そのターゲットは先進諸国のどこでもいい、環境保護に反すると彼らが考えているイベントや会議――つまり科学技術の推進や開発を誇示するような、何らかの催しが行われれている最中を狙って実行してほしい、と……」
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