SCENE15 国際刑事警察機構日本支部事務所の一つ

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 「なんだよ?」  「大きな事件で捜査本部ができている時は別だけど、通常勤務だと、夏美は今頃帰ってきて、シャワーを浴び終えたくらいの時間だわ」  「それがどうかしたのか?」  夏美がシャワー……。その光景を思わず想像しそうになり、慌てて打ち消す。  「ちょうどいいじゃない? ホッと一息ついたところに声をかけてあげるなんて」  「テロの話をするのにかよ?」  「その話は簡潔にして、で、気をつけろよ、って心配している気持ちをしっかり伝えて、お互い落ち着いたら映画でも観に行こう、なんて……ああ~、なんで私がこんなアドバイスしなきゃいけないのよ?」呆れた顔で頭を搔く早苗。そして目つきを鋭くし「早くしなさいよ」  「わ、わかった、わかった……。ちょっと一息ついてから……」  圧倒された感じで、鷹西は後退る。  「あれ? もしかして、夏美がシャワー浴びるところとか、想像しちゃった?」  ニヤリとする早苗。ギクリとする鷹西。  「そ、そんなことあるわけないだろ」  「声が震えてるけど? 夏美ってね、華奢に見えるけど、鍛えてるからきれいでいい身体してるんだよ」  「いっ! いい加減にしろ! それもセクハラだぞ。国際刑事警察機構(インターポール)勤務取り消されるぞ?」  「アハハ……。紅くなってる。話しづらいなら、私、隣の部屋に行ってまとめるね。こっちはすぐ終えられるけど、ゆっくり話していていいよ」  早苗はそう言いながらノートパソコンを手に立ち上がり、そそくさと部屋を出て行った。  やれやれ、と何度目かの溜息をつくと、鷹西は改めてスマホを見た。
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